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コラム
 ■Winny対策で見え隠れするMSの新戦略?■ 【2006年2月】

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 この状況を打破すべく立ち上がったのが、IT寵児のマイクロソフト(MS)である。月例のパッチ管理で利用する「Windows Update」には、「悪意のあるソフトウェアの削除ツール」という聞きなれないプログラムも同時にダウンロードするようデフォルト設定されている。このツールがWindows上で稼動しているAntinnyウイルスを自動で特定し、削除までしてくれるのである。対応する亜種の数はすでに40種類を超え、巷の噂によるとかなりウイルス駆除に成功しているらしい。しかし、この実績の裏でMSに危機感を募らせる業界も存在する。アンチウイルス(AV)ベンダーである。

 AVベンダーは、新しいウイルスが発見されると検体からパターンファイルを作成し、それを自社製品のデータベースに加えることで、製品顧客をウイルス感染から防ぐサービスを提供している。この市場は全世界で年間40億ドル以上とも言われる巨大産業である一方、検体データベースの数やデータベース化までの作成時間が絶対的な競争優位ベクターであり、他社の検知する製品を自社で検知できないことが、そのまま「ビジネスの敗者」に繋がりかねない弱肉強食の世界でもある。だからこそ、OSレベルで自動的に削除してしまうMSの画期的なWinny対策が、新たな「抱き合わせ戦略」による巨大市場の乗っ取りだと感じるのも仕方がないかもしれない。

 確かにMSは、そう疑われる歴史を歩んできた。1990年中盤以降、インターネットエクスプローラ(IE)をWindowsに抱き合わせた「ブラウザ戦争」で独禁法違反にまで発展した経緯がある。日本市場でも10年ほど前、それまでワープロ市場シェア1位だった「一太郎」を「ワード」で駆逐した排除措置勧告事件があった。その当時も、MSは日系ベンダーに圧力をかけてWindowsにワードを同梱させたことが発端だと言われている。その後の一太郎の斜陽を見る限り、AVベンダーたちがMSに危機感を持つのは当然の心理であろう。

 一方のMS側は、当然のごとくそんな懸念は杞憂に過ぎないと主張している。まず、Winny対策は日本政府主導のISP団体であるTelecom-ISAC Japanから要請されたためだと説明している。Antinnyという日本古来のウイルスに対応したことがその姿勢の表れと取れないこともない。背景には、感染パソコンが特定の日系webサイトにサービス拒否(DoS)攻撃を継続して行っていたため、ネットワーク帯域に負荷がかかる問題が発生し、ISP側で対策が急がれていたことが挙げられる。それは確かに事実である。自動インストールというOSレベルの機能を活用することで、AV製品を導入していないユーザまでも対象にAntinnyを自動駆除できるとした方法が成功したのは間違いない。また、この対策プログラムは機能面でもAV製品と一線を画しているという。パターンファイルを基に感染前にウイルスを発見・駆逐するAV製品の「予防効果」はなく、あくまでも感染後の駆除に特化しているため、AVベンダーの製品との住み分けはできているとの考えだ。

 しかしながら、それでもMSのやり方にはAVベンダーの反発を招く部分もある。例えば、MSのこれ見よがしの広報活動がそれだ。Winny対策を発表した昨年10月、本社からわざわざセキュリティ担当副社長のMike Nash氏が来日し、このリリースに花を添えている。それと前後し、Malware対策チームのディレクターであるJason Garms氏も来日し、精力的に活動していたという。OS提供会社がアプリケーション開発も行うほうが絶対的に有利であることを考えれば、本社AV戦略の要とみられるこれら人物が日本のマスコミに登場することで、AVベンダーを無用に刺激したことは想像に難くない。

 今後、MSが既成事実を盾に実際にAV市場に参入を果たすかどうかはわからない。MS側もブラウザ同梱戦略による独禁法問題で懲りているはずであり、AV市場では通用しないことは百も承知であろう。一方、AVベンダー側はMSに疑心暗鬼になるよりも、まずはよりいっそうの努力が大前提である。確かに巨大企業を恐れる状況証拠があることも理解できる。しかし、日本市場に限ってはAntinnyを十分に駆除できない不完全な自社サービスが、そもそもMSに対策をまかされてしまうきっかけを与えてしまったのも事実である。MSの一挙手一投足に戦々恐々とする前に、まずは先行市場においてMSの入る余地がないよう自社サービスの完成度を上げることに注力しなければならないのは言を待たない。むしろ、「究極のWinny対策はWinnyを使わないことだ」とマスコミで指摘されていることに対し、AVベンダーのプライドをかけてもっと危機感をもってもらいたいものである。

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